新宿末廣亭がクラウドファンディング

Rakugo hall

東京を代表する老舗の寄席、新宿末廣亭が経営危機に陥り、閉館のピンチに立たされています。新宿末廣亭はクラウドファンディングで資金調達を始め、とりあえずの危機は回避できたようです。

閉館の危機をホームページに告知

コロナ禍でエンタメ業界が苦境に立たされていることは、よく報じられていますが、あの新宿末廣亭がここまで追い詰められていたのかと知ると、胸が痛みます。

5月に入り、そのお知らせが新宿末廣亭のホームページに掲載されました。

「新宿末廣亭経営存続のためのご協力のお願い」と題された、その告知はショッキングな内容でした。

要約すると

①コロナ禍により収入が約7割減となり、毎月多額の赤字が生じている

②このままではあと数か月で、閉館しなければならない

③閉館も検討したが、何とか存続させたいので、クラウドファンディングに踏み切ることにした

④クラウドファンディングには返礼品も用意したので、ぜひ協力してほしい

こんな内容です。

江戸情緒漂う貴重な寄席

東京・新宿3丁目の繁華街にあり、純和風の建築で異彩を放つ新宿末廣亭。中に入ったことはなくても、通りがかりに見て、興味を覚えた方もいるのではないでしょうか。

寄席の前にずらりと並んだ寄席文字の看板も情緒があります。

内部は椅子席のほかに畳敷きの桟敷席があり、江戸の風情を今に伝える貴重な空間として、多くの演芸ファンに愛されてきました。

建物は築76年

明治時代から末廣亭を名乗る寄席は新宿に存在していましたが、現在の新宿末廣亭は、昭和21年(1946年)に、建築家でもあった北村銀太郎氏が建設したものです。北村氏は新宿末廣亭の初代・席亭を長く勤め、大旦那として落語界の重きをなしてきました。

六代目三遊亭圓生が落語協会から離脱した「落語協会分裂騒動」では、調停役を務め、落語界の繁栄に助力してきました。

以後、新宿末廣亭の席亭は、北村家の血族が務め、現在は銀太郎の孫の真山由光さんが4代目の席亭となっています。

今回の「新宿末廣亭経営存続のためのご協力のお願い」も、真山由光さん名義で出されました。

寄席文化の希少性を訴える

「新宿末廣亭経営存続のためのご協力のお願い」には、寄席文化の希少性にも触れています。

チケットの売れる芸人のみを出演させ、ほかの日を休館にするような形にすれば経営は成り立つかもしれないが、後進が育たない、というものです。

寄席というのは特殊な空間です。

テレビで見るような売れっ子も出演しますが、寄席でしか見ることのないベテラン芸人も多く出演します。

高座に上がるのは落語家だけではありません。漫才、漫談、奇術、曲芸など様々な芸人が登場します。

正直言って、あまり面白くない芸人や毎回、同じネタを繰り返している芸人もいます。

見ているこちらの方が、この芸人、生活はどうしているのだろうか、収入はあるのだろうかと心配になってしまうような人もいます。

でも、これこそが演芸の世界なのかもしれません。

昨年も支援プロジェクト

現在、都内には5軒の寄席があります。

新宿末廣亭のほかに上野の鈴本演芸場、浅草演芸ホール、池袋演芸場、上野広小路亭です。

それぞれ成り立ちや経営形態が違いますが、いずれにしてもコロナ禍で打撃を受けたことに変わりはないでしょう。

実は昨年、落語家の団体である落語協会と落語芸術協会が共同で、寄席支援のクラウドファンディング・プロジェクト「支援を寄席て」を行いました。

当初の目標金額は5000万円でしたが、わずか1か月半の間に、目標を大きく超える1億円の支援金が寄せられました。

寄席の危機に際して、寄席文化の存続を願う人の熱意を感じる素晴らしい試みでした。

▲▲▲ 「支援を寄席て」の支援を呼びかけた落語協会・柳亭市馬会長と落語芸術協会・春風亭昇太会長

返礼品も用意

新宿末廣亭のクラウドファンディングでは、寄付金額に応じてオリジナルの千社札や招待券などが返礼品として用意されました。

最高の100万円の寄付では1年間有効の年間パスポート2名分、グッズセットなどです。

◇返礼品一覧◇

寄付金額返礼品
10,000円千社札2枚&招待券1枚
30,000円千社札10枚&招待券5枚
50,000円千社札20枚&招待券10枚
100,000円場内お名前掲示(1年間)&千社札2枚&招待券5枚
1,000,000円末廣亭年間パスポート2名分(1年間有効)
末廣亭グッズ全部盛りセット(千社札、湯飲み、パスケース、Tシャツ、
扇子=3種=、ミニ提灯、はっぴ手ぬぐい、クリアファイル)

寄席を訪れるのが最大の支援

クラウドファンディングとは別に、寄席を訪れるのも最大の支援の一つです。

新宿末廣亭の入場料は3000円。公演時間は約4時間ですので、現代のライブ・パフォーマンスとしては破格の安さといえるのではないでしょうか。

(追記)

最終日の8月31日現在で、2872万円の寄付が集まったそうです(目標金額5000万円)。

8月の興行には落語協会のオールスターが集結。人気講談師・神田伯山らも駆けつけ、集客に尽力しました。

目標には届きませんでしたが、新宿末廣亭のホームぺージには席亭・真山さんの感謝の言葉が掲載されています。